東冬『嵐ノ花 叢ノ歌』1巻

嵐ノ花 叢ノ歌 (アラシノハナ ムラクモノウタ) (1) (リュウコミックス)

嵐ノ花 叢ノ歌 (アラシノハナ ムラクモノウタ) (1) (リュウコミックス)

 
 まず、とにかく美麗で繊細、達者な画に引き込まれる作品。その筆が描くのは動乱の満州国を舞台に、中国の古き神々の名を持つ「神農」の一族と、それを追う者達の中国の物語。
 日本と中国の神話に連なる要素・意匠が数多くちりばめられ、創世神話をめぐる伝奇物語であります。
 古い神々の名を持ち、その血脈に歴史の秘密を取り込んでいる神農一族。鑪師・傀儡師の技術によって創り出された日本軍の秘密兵器「蔵王」。いわくありげな軍人や特務機関、などなど、心躍る登場人物・設定の数々。

 しかしあくまでその動乱の時代を描くことが主眼ではなく、その時代の中での人物達の秘密と謎を秘めた人物、そして彼等の歴史を描くことを主としております。

 というわけで、神農一族の少女「真珠血」と、その神農が生み出した「渾沌」と、「蔵王」の戦いに巻き込まれて記憶を失った少年「シュテン」。この二人の出逢いが「血」と戦乱の物語を紡いで行くことになりそうです。

 満州国、という言葉や神話などに心くすぐられる人には特にお勧め。