糸杉柾宏『キミキス スウィートリップス』1巻

 白泉社東雲太郎スクウェア・エニックス黒井みめいに次いで「キミキス」コミカライズとしては3作品目となる本作は「チャンピオンREDいちご」連載中。
 この第1巻目には

  1. 「菜々色の恋」(菜々編)
  2. 「不器用な恋」(二見瑛理子編)
  3. 貞淑な恋」(祇条深月編)
  4. 「生真面目な恋」(栗生恵編)
  5. 「年上の恋」(水澤摩央編)

 以上の5編を収録。

 1人のヒロインに対して1つの独立したエピソードを語り、1話ごとに設定がリセットされる本作は、形式としては東雲版と近いスタイルを取っております。
 ただ、東雲版がヒロインと光一の恋愛を客観的に描写しているのに対し、この糸杉版「スウィートリップス」は、主にヒロイン側からの視点で恋の始まりからキスに至るまでを描いております。


 同じ原作を取り扱っている以上、どうしても比べてしまいますけれども、印象としては東雲版はゲームのエロスの部分とギャルゲー的狂気とでも言うべき突飛さをある意味忠実に再現していて、こっちの糸杉版は恋愛の始まりの女の子の心の機微に重きを置いているといった感じです。
 ゲームのシナリオにアレンジを加え、基本は甘酸っぱくて切ない恋の始まりの物語。
 膝にキスとか耳にキスとかそれはキスじゃなくて愛撫だよ! というツッコミ入れられる微妙に狂気を帯びたエロスも良いですが、こちらの胸がキュンとするような感覚もまた良いものです。
 エロスの東雲、胸キュンの糸杉、とでも言ったら良いでしょうか。


 糸杉柾宏の描くスレンダーな体型のキャラ達は可愛らしいし(特に二見さんは絵柄的にハマっています)、1エピソード40ページ弱、という比較的短い尺の中で戸惑う乙女心をきっちりまとめている構成も読ませるものがあります。「キミキス」原作に興味が無くても普通に恋愛ものとしても完成度高いんじゃないでしょうか。


 巻末のおまけ漫画とかカバー外した表4とかもバカバカしくてステキです。MONOクロの時もそうでしたが、糸杉センセーは妙に巻末おまけで体を張ってますな。