伊藤静『福助』2巻

福助(2) <完> (モーニング KC)

福助(2) <完> (モーニング KC)

 他人を幸せにする力を持っているけれど、その力を使う度に年を取っていく不思議な子供・福助。その福助と、彼に出会った人々との物語第二巻。

 1巻で物語は綺麗にまとまっておりますが、その話で福助が関わった人たちとはまた別の人々との物語。
 再び木箱の中から赤ん坊として福助が生まれるところからこの2巻は開始。
 子供の生まれない夫婦のもとにひょんことから福助がやってきます。

 夫婦に小さな幸せを与えながら少しづつ年を取っていく福助。しかし、夫婦は彼を実の子供のように大切にし「力なんか使わなくていいから一緒に年を取っていこう」と語ります。
 夫婦と福助の相田には愛情と相互の思いやり、そういう優しさに満ちています。

 しかし、そんな幸せな時間は、「福助の力」を欲する者によって再び破られることに。しかし、その福助を求める者達も決して悪人ではなく、自分以外の愛する者を想っての行動であり――。
 ネタバレになるので詳細は書きませんが、人々の哀しい願いとそれに応える福助の姿は強く心に迫るものが。

 自らを犠牲にして他者に幸せを与え続けてきた福助
 その結果が必ずしも本人の望んだ形になることではないことも見てきた福助
 それでも、自らを犠牲にして無私の愛を人々に注ぐ福助

 そんな福助との出会いにより、人々は「幸せ」を手に入れますがそれは決して福助の力によってのみ手に入れたものではありません。彼との出会いによって人々の愛情や絆、そういったものの大切さを再確認し、自らの力で再び前に進むことによって掴んだ幸せなのです。

 帯には1巻同様「ファンタジック・ホラー」とありますが、私はホラーとは感じません。哀しくて優しい非常に上質なファンタジーではないかと。
 物語はこの2巻で完結。1・2巻でそれぞれ独立した話ですが、是非両方読んでいただきたいお勧めの作品です。


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