武田日向『異国迷路のクロワーゼ』1巻

異国迷路のクロワーゼ 1 (角川コミックス ドラゴンJr. 111-2)

　19世紀末、フランスはパリの下町にある工芸店に奉公にやってきた少女・湯音（ゆね）。
　店主のクロードとの交流を介し、慣れない異国で少しづつ人々と心を通わせ、自分の居場所を確認していくて彼女の姿を描いております。「ドラゴンエイジPure」連載中。

　働き者で真面目で健気で優しいユネと、厳しいところもあるけれど根は思いやりのあるクロード。異なる分化の中で育った二人が、日々のやりとりや小さな事件の積み重ねから徐々に互いの背景について理解を深めていく様子が優しげな筆致で丹念に描かれております。
　時代遅れとなってもうじき閉鎖される商店街にある工芸店「ロアの看板店」。つましいながらも50年の歴史を刻んできたその店に寄せるクロードの愛着と誇りを理解し、彼に認めてもらおう努力するユネ。
　最初は彼女を厄介に思っていたクロードも、彼女の献身とひたむきさに彼女を近しい者として認めるのでありました。
　まるで迷路にも移る異国の町並みの中で健気に、人としての優しさや思いやりを忘れないで働くユネの姿はちょっと心が温かくなるものがあります。

　そんな二人にちょっかいを出す日本かぶれのお嬢様、アリスの存在がお話的にもビジュアル的にもちょっとしたスパイスに。

　そしてやっぱり見るべきは絵の繊細さ。細密に描かれたキャラや背景が大変に美しく、特にカラーページは美麗の一語に尽きます。パリの町並みの中で日本人形のようなユネの和装が実に映えますなあ。

　しかし、19世紀末に明治政府の助力もなく少女一人で洋行、しかも奉公人として、って一体どんな身分の娘さんなんだユネちゃん。

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