渡辺航『まじもじるるも』2巻

まじもじるるも(2) (シリウスKC)

まじもじるるも(2) (シリウスKC)

 人間界で修行中の魔女るるもと、スケベでバカな高校生・柴木耕太。何でも願いが叶う魔法のチケットを柴木に使い切らせることがるるもの修行の完了ですが、チケット残量=柴木の命。
 そんなジレンマを抱えつつも思春期の誘惑に負けてチケットを使ってしまう柴木とるるもの明日はどっちだ!

 2巻になりまして、キャラもより立ってきて賑やかになってまいりました。自分の気持ちを外に出すのがすごく下手で平坦な表情にみえるけれども、実は豊かな感情の持ち主のるるもは大変に心をくすぐる可愛らしさに溢れております。学校で働くことになって他のキャラ達との絡みも増え、しずかに、しかしますます魅力的な感情の揺れを見せてくれるように。
 そして柴木もバカでスケベでありますが、やるときはきっちりやる男。バカをやりながらも他人に対する思いやりと芯の強さを兼ね備えた少年漫画の主人公の血脈を色濃く持った好男子であります。7話で風紀委員の井上さんに見せた優しさなんて実に男らしさに溢れております。あらゆる意味で。

 そんなるるもと柴木、二人の間に微妙に芽生えているラブ以前のほのかな互いへの意識がまた爽やかでありくすぐったくもあり。何だか分からない気持ちながら、とにかく相手が大切だ、という感覚が実に良いですな。

 と、基本明るく楽しく展開している物語ですが、基本の部分に柴木の命の問題という結構重いものを抱えております。愉快な物語の中にも、11話の子猫を拾ったエピソードのように時にビターでシビアな話を混ぜ込んできて、これは単にお気楽で楽しい話ではないのだ、ということを読者に示します。

 るるもの修行を完了させてやりたい柴木、でもそのことは即ち柴木の死を意味するということは、二人の関係がどんどん良いものになってきているだけに、楽しいエピソードの裏で徐々に重みを増してきているような気がいたします。