アントンシク『ガゴゼ』(2)

 陰陽師・土御門有盛に力を封じられ、童子の姿になってしまった大鬼、ガゴゼ。
 部下の妖怪達に命を狙われ逃げる中で、少女・鬼無砂と出会い、人と心を通わせたかと思われたが、「鬼」であることの宿命からガゴゼは彼女を捨てて再び放浪する。
 そんな中、有盛の放った式神・青龍と出会い、復讐のために京を目指すガゴゼ。
 そして有盛は、飛び散ったガゴゼの妖気を集めるために一人旅立つ――。

 
 童子の姿となってもなお猛々しいガゴゼ、異形の傷を仮面に隠す美貌の陰陽師有盛、チャーミングだけれど強大な力を秘めた青龍、など魅力的なキャラクターが、それぞれの思惑を持って物語を動かしております。

 鬼無砂の優しさから、人の心の温かさに触れるも、「鬼」であるが故にそれを理解できず、彼女を傷つけてしまい、そのことに戸惑いながらも、一方で自らの力を封じた人間に激しい憎悪を抱いているガゴゼ。この相反する感情が物語の鍵であり、また彼を魅力的なキャラクターにしております。
 そしてそんな「人」との関わりに戸惑うガゴゼに、今なお忠誠を誓う山犬の妖・朝倉は「人を食らえ」と進言するのでした。

 そして、時の権力者・足利義満の調伏のため呪詛の祈祷を陰で行う有盛。彼の額にある傷は何なのか、そして彼が呪殺に用いるカシリサマとは。
 そしてガゴゼの力の衰えとともに恙虫に食い壊されたかつて人間がガゴゼを恐れ、神に祭り上げ「大朽御魂残主」と呼ぶ彼の依代の朽木。そこに残る思い出せないガゴゼの記憶とは。
 様々な謎を孕み、物語は展開していきます。

 そして、禍々しく、そして迫力のある妖怪達の描写はとても魅力的。
 グロテスクな妖怪と、端正な人間のキャラクターが調和をもって描かれるこの画は得難い魅力に溢れております。

ガゴゼ 2 (2)ガゴゼ 2 (2)
アントンシク

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