水上悟志『ぴよぴよ 水上悟志短編集Vol.2』

 『げこげこ』に続く水上悟志の短編集2冊目。

 ニワトリにならずでっかくなるヒヨコと父と娘の家族を描いた表題作「ぴよぴよ
 兜と面頬で素顔不明の少女と、彼女からから告白された少年の「魔界斬妖剣・ドキドキ地獄変
 事なかれ主義、何事もやり過ごし無為に過ごしている青年の葛藤を描く「がんばってちゃんとやめよーぜ」
 毎日同じ事の繰り返し、というサラリーマンが実際に同じ2月14日を何度も繰り返すことになる「えらぶみち」
 妖怪と人間が暮らす百鬼町で、才能の無い退魔師の一族の娘・きららが道に突然現れて通交の邪魔になっている「猫のたまご」をどかそうとする「サンダーガールと百鬼町」
 百鬼町にやってきた顔の真ん中に穴が空いている妖怪が、自分が何者かを探る「風穴頭と百鬼町」
 以上を収録。

 とぼけた味わいのある珍妙な人外生物と、それらを違和感無く受け入れてしまっている懐の広い世界、そしてそこから紡がれるちょっと照れくさいようないい話、と水上悟志の短編の要素が詰まった一冊。

 個人的には「ぴよぴよ」の巨大ひよこ源八郎の存在感とすっとぼけた味わい、話の綺麗な締め方が大変にお気に入りです。堅物なのにボケ役のお父さんと、ツッコミ役娘のすずめちゃん、そして巨大ヒヨコの源八郎が作り上げる「家族」の雰囲気が実にいい。
 「サンダーガール〜」の甘酸っぱさとか、「がんばってちゃん〜」「えらぶみち」の青臭さも相当に嫌いではないです。

 んー。良い話だなあ。長編になるとバトル物になる水上悟志(こちらもとても上手い)ですが、短編の話と雰囲気作りが際だって上手いと思います。

ぴよぴよ―水上悟志短編集Vol.2ぴよぴよ―水上悟志短編集Vol.2
水上 悟志

少年画報社 2007-01-26
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