大森倖三『リーンの翼』(3)

 OVAも完結した「リーンの翼」。コミック版もこの3巻で完結。
 オーラロードを通って東京に顕現したホウジョウ軍と反乱軍は、自衛隊と米軍をも巻き込んだ大乱戦となる。
 そしてオーラロードの中で先の大戦無意味さを見せつけられたエイサップとサコミズ王。そして二人が現れた東京上空。変わり果てた日本に絶望したサコミズ王のオウカオーはハイパー化していく。そして混戦を極めた戦場に核兵器が投入され――。

 いやー、終盤の登場人物の暴走っぷりが素晴らしく面白い。バイストンウェルから地上に出た途端に狂気の殺戮モードに入るロウリと金本。ダブルディスパーーッチ! じゃねえよ、という。

 そして、何と言ってもサコミズ王。
 アニメでもそうでしたが、どう考えても主役はこのサコミズ王で、エイサップ君は狂言回し。終盤はサコミズの一人舞台。
 戦争の無意味さに対する怒り、失われた命に対する哀しみ、己の忠義と捧げた命が無為になったと感じた絶望、それらが混ざり合って、もう理非もない、荒れ狂う力の化身となるサコミズ。はっきり言ってこの人のやっていることは無茶苦茶なのですが、それがどこか滑稽でもあり、哀しくもあり、堪らなく格好良くもあるという富野マジック。そして最後の浄化はやっぱりグッときます。
 個人的にはサコミズ王は富野キャラの中でも屈指の名キャラクターだと思うのですが。そうでも、あるがぁぁぁぁぁ!

 基本的にアニメと同じネームで語られたコミック版ですが、アニメとは見せ方を変えている部分もあり、それがせいこうしていてコミカライズとしては相当の良作でありましょう。ラストの描写もアニメ版よりコミック板の方が良いと思います。

リーンの翼 3 (3)リーンの翼 3 (3)
富野 由悠季 大森 倖三

角川書店 2007-02-26
売り上げランキング : 715

Amazonで詳しく見る
by G-Tools