志水アキ『異郷の草 三国志連作集』
三国志に登場する人物の「個の物語」を描く短編集。
老境に達し「岩のようになりたい」という理想を語る黄忠を描く「巌のごとく」
愛に飢えた鍾会の乾いた栄光とその失墜を描いた「瞼の楽土」
無頼の徒から成長していく甘寧を描いた「彷徨う鈴影」
虐げられた漢人として孟獲を描いた「異郷の草」
劉備の古くからの友として自由に生きる簡雍を描いた「江河の一滴」
以上の五編を収録(「巌のごとく」「瞼の楽土」は『怪・力・乱・神クワン』4巻末にも収録)
「三国志」という大きな物語の流れから各人の一つのエピソードを切り取り、ヒューマンドラマとして仕上げられています。
近頃多い三国志の名前とキャラクターだけを借りただけの作品群とは一線を画すしっかりとした作りで、史実・演義を丹念に取材してあるのがわかり、その上でのアレンジが実に読ませる作品。各人物に対するイメージを膨らませてくれます。
個人的には「巌のごとく」が一番好きかなあ。
そして志水アキのシャープな線で描かれた人物達はとても格好いい。深い年輪をその顔に刻んだ黄忠、酷薄なインテリ鍾会、屈託を抱えた無頼漢甘寧、気弱な一般人孟獲、飄々とした簡雍、キャラクターの特性が表れていて実に良いです。
三国志漫画として相当完成度の高い作品。三国志に興味がある人は是非。
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