「コミックビーム」2007年4月号

タイム涼介アベックパンチ
 うーん。この作品は実にいいなあ。
 はぐれ者達の鬱屈と、世界からの疎外感を、深刻さを振り払って乾燥したユーモアと詩情を以て描いております。個人的には今ビームで一番注目している作品。

吉田戦車「宇宙巨人アムンゼン(新連載)
 地球から遠く離れたスコット星。怪獣ハトラに追われるスコット星の少年・ゾリーは絶体絶命のピンチに不思議な光を見、気が付くと謎の巨人アムンゼンと一体化していた!
 ウルトラマン的な立ち位置のアムンゼンはオッサン顔だし、怪獣の吐く痰を吐き返して「こんな痰では売れん!」と言ったり、一体何者なのか正体がさっぱり分かりません。
 吉田戦車的奇妙な登場人物は妙に味があってやっぱりいいですが、1話目ではこれから話がどうなっていくか全く予想がつきません。

森薫「エマ 番外編」
 ヴィルヘルムとドロテアの朝の目覚めで交わされる語らいで明らかになる二人のなれそめ。情熱的なドロテアとぶっきらぼうなヴィルヘルム。ベッドの中で二人の思い出話をしっとりと描いております。相変わらずドロテアはべったりで、ヴィルヘルムは淡々として面白い距離感をかもしつつ、実にラブラブ二人な二人であります。

しりあがり寿/安永知澄「なぎ」
 遂に異形のサナギになってしまったなぎ。ここから世界を破壊する鬼が羽化する、とそのサナギを殺そうとする父親に、なぎがこの世を憎めば破壊神に、愛していれば救世主が誕生すると説明して従兄。何とか世界を愛するように、となぎが好きだった男子生徒に愛を語らせようとするが――
 伝記的前フリをしながら、ああこういう風にオチをつけるんだ、という感じ。らすとのバカっぽさとオチのしょんぼり感はなかなかステキ。このネタを安永知澄の画でやることに意味があるのだなあ。