きづきあきら+サトウナンキ『メイド諸君!』2巻

 メイド喫茶ミルフィーユ」で働く女の子達を描いた作品。(→1巻感想
 ではありますが、そこはきづきあきら+サトウナンキのコンビ。一筋縄ではいかないモノを孕んでおります。

 この2巻では「ミルフィーユ」常連客の青年・鳥取との間が急接近するチョコ、灰音の兄・秀一郎の世話をする事となったあるみ、そんな二人のエピソードが中心に。

 困っているところを助けられ、鳥取が気になる存在となったチョコ。しかしあくまでメイド喫茶の客と店員、という関係を崩さない鳥取に対して、それでは、とメイドのままの姿で彼の家を訪れるチョコ。

 本当はチョコの事が気になっているのに、客と店員という関係を超えて一個の人間として向き合う事に恐怖を感じる鳥取。「役割」を介してしか人とコミュニケーションを取れない不器用さ・弱さがチョコと親密になることを拒絶します。
 この辺のおたく的思考は、どこか身につまされるものがあって読んでいて結構クるものがあります。
 そんな相手でも健気にアプローチをかけるチョコですが……果たして上手く行くかどうか。

 一方、灰音の命令によって秀一郎の「専属」となったあるみ。灰音の期待に応えたい、灰音の側に居たい、という一心で、時に理不尽な秀一郎の世話を続けるあるみ。
 そんなあるみに対して灰音が口にするのは「これは命令だ」という言葉。そして兄とともに彼女を評して曰く
「バカでしょう?」
「ペットでも飼ったつもりでしつけてみなよ」

 愛情の裏側と、そこに見える支配と服従の関係に慄然とします。
 しかし、単なるサディスティックな欲求を満たすために灰音がそういう言動を採っているかというとそうでもなさそう。妙にカラリとそんな話をする灰音もまた何かを抱えていそうであります。

 メイド喫茶というきらびやかな設定を選びながら、その根底には人間関係のドロドロとしたものが蟠っているようです。
 そんな「甘さ」と「黒さ」が同居するきづき節が炸裂しております。
 可愛いけれど、甘いだけでは終わらない作品。

メイド諸君! 2巻 (ガムコミックスプラス)

メイド諸君! 2巻 (ガムコミックスプラス)