久正人『ジャバウォッキー』1・2巻

ジャバウォッキー(1) (マガジンZKC)

ジャバウォッキー(1) (マガジンZKC)

ジャバウォッキー(2) (マガジンZKC)

ジャバウォッキー(2) (マガジンZKC)

 時は19世紀末。恐竜が絶滅せず「恐竜人間」として進化した世界で、女スパイ リリー・アプリコットと、オヴィラプトルの男 サバタ・ヴァンクリフのコンビを主役に、歴史の裏の物語を描く。「マガジンZ」連載で、1・2巻同時発売。

 「マガジンZ」を何号か読んだ時に気になっていた作品でしたので、コミックを買ってみたのですが、やぁ、これは非常に面白い。

 ニコライ2世暗殺直後のロシア、発明家 ニコラ・テスラが登場するイタリア、西太后が権勢を振るう中国。19世紀末という世界が大転換しようと軋みを上げている危なげな魅力に満ちた時代。

例えば、第一エピソード「HIDDEN DRAGON」

 ロシアの皇帝が所持していたという「宝珠」を追ううちに出会ったリリーとサバタ。その二人に皇帝を暗殺したテロリスト ドローホフが率いる「最後の兵力」が襲いかかる。強大な力を持つとされる宝珠の正体とは一体。そして二人の運命や如何に!?

 「どこの国でも恐竜は隠されいないものとされている。
  森の中のジャバウォックあつかいさ」

 と語るサバタの言葉通り、歴史の裏側に隠された恐竜の存在。その表沙汰にならない歴史舞台で蠢く恐竜たちと、サバタとリリーのコンビの戦い。
 人間の歴史ではあり得ない物語が、人間社会ではあり得ない存在によって語れることにより、実にケレン味溢れる物語に。性格が異なるリリーとサバタのコンビの掛け合いがまた魅力的。
 虐げられてきた種族「オヴィラプトル」など、恐竜としての設定が活きているのも面白い。

 そして光と陰のコントラストが非常に強い画面構成、ここぞという場面で使われる大ゴマと短く鋭い台詞。これが実に印象的で格好良いのです。
 非常にオススメの一作。