漫画:阿部洋一 原作:平野俊貴 植竹須美男『少女奇談まこら』1巻

 母親と二人で静かに暮らしていた少女・まこら。ある日突然行方不明になってしまった母親を探すために家を出る彼女に従うのは一枚布巾・あわせ壁・小袖の手の三妖怪。まこらの前に次々と現れる恐ろしい妖怪達との戦いに勝って、母親を探し出す事ができるのか――

「月刊少年ファング」連載中で、ファングコミックス第一弾の一つ。
 妖怪と人間のハーフであるまこらが母親と自分のルーツを探しながら旅を行い、そこに悪玉と善玉の妖怪が出てくるする妖怪退治ものとなっております。

 お供の三妖怪のうち一枚布巾、あわせ壁というのはオリジナル妖怪。あわせ壁はぬり壁の小さいのらしいですが、一枚布巾は、一反木綿、あるいは白うねり辺りがモデルでしょうか。
 1巻では敵役に団三郎狸なども登場しますが、その描き方を見るに、個々の妖怪が持つ地縁・伝承とは切り離した「キャラクター」としての妖怪を描いていくスタンスのようです。

 「ファング」連載をちらと読んだ時には何だか地味な印象ではありましたが、こうやって単行本にまとまったものを読んでみると、なかなか基本に忠実なしっかりとした話で好感度が高いです。
 思い立ったら一途、ちょっとハラペコキャラも入っているまこらもなかなか可愛らしい。一枚布巾をマフラーに、小袖の手を上着に、あわせ壁をストラップに、という出で立ちもビジュアル的に楽しくて良いですわね。
 おどろおどろしさとポップさ、可愛らしさを併せ持つ妖怪描写も魅力的。

 派手さはないものの、丁寧に描かれていて、妖怪漫画というジャンルの一つの正統の血をきちんと受け継いでいるなあ、という印象であります。

少女奇談まこら 1 (1)少女奇談まこら 1 (1)
阿部 洋一

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