やまむらはじめ『神様ドォルズ』1巻

 表紙の色遣いが今までのやまむらはじめ作品とだいぶ異なっていたので売り場でちょっと見つけるのに時間がかかりました。なんか普通に恋愛モノでも始まりそうな感じの表紙であります。

 が、その作品の中身は、ロボットのような格好をした「案山子」と呼ばれる神の抜け殻を操ることができる能力者「隻」達のバトルありの物語。や、恋愛要素もありますが。

 隻の資格を捨て、村から出て東京で生活することになった青年・匡平。
 案山子「玖吼理(ククリ)」を操り、彼を追って上京してきた隻の少女・詩緒。
 そして、村から抜け出し案山子「暗密刀(クラミツハ)」の力を使って殺人を繰り返す阿幾。

 この三人の因縁と、案山子と隻、それらの根源であり三人出身地でもある「村」の秘密を軸に物語は展開していきます。
 今は普通の人間として暮らしているものの、かつて隻だった経歴を持つ匡平。その彼を「そんなのは本当のお前じゃない」と挑発する阿幾。その二人の上に密かに、しかし大きな影響力を及ぼす村の存在。色々と気になる設定が見え隠れしております。

 同時に、匡平と彼が憧れる女性・日々乃、そして匡平を兄と呼ぶ詩緒の三角関係が展開。
 色々な意味で不器用なんだけれども、その不器用さの中に子供らしい素直さが見え隠れする詩緒が大変に可愛らしい。日々乃と匡平の関係に嫉妬してみせたり、ゲームと一緒に体が動いちゃったり。感情表現が下手で、でも匡平を一途に慕っていたり、おなかが鳴って赤面してしまったりときちんと女の子している詩緒。表情と反応がいちいち可愛らしくてたまりません。
 日々乃のお姉さんっぷり、こちらもまたなかなか。
 それぞれ別の方向から事件を追っている空張刑事と部長の親子なども頓狂なキャラクターで楽しいです。
 総じて、キャラの魅力が高い印象。

 可愛らしい詩緒の反応を見ているだけでも大変心和むものがありますが、物語としても、神の名をいただく案山子とはそもそも何なのか、阿幾と匡平の過去に何があったのかなど興味深い複線が多々張られております。
 この先の展開が気になるオススメの一作。
 詩緒のかわいらしさにやられちゃったら更にオススメの一作。

神様ドォルズ 1 (1)神様ドォルズ 1 (1)
やまむら はじめ

小学館 2007-07-19
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools