大和田秀樹『ドスペラード』

 問題作揃いの「チャンピオンRED」掲載作品の中でも一際インパクトの強かったあの問題作がついに単行本化。

 魔法使いギルド・聖竜会の親分の暗殺、それに伴って開始される聖竜会系VS鳳凰会系の血で血を洗う抗争。
 そこに帰ってきた伝説の男・エイジ。
 彼は地水火風の四大元素のどれにも属さない「萌え」の元素を使いこなす魔法使いだったのだ――。

 「三十歳まで童貞だと魔法が使える」伝説を使って、思いきり暴走・迷走する異形の萌え漫画。
 魔法使いギルド=極道の図式で展開する仁義なき戦いから、いつの間にか萌えと童貞を巡る物語に大転換。萌えコスプレをしたオッサン達が画面に満ちる大変ステキな絵面が展開されていきます。
 最初は渋いオッサンが萌え魔法発動によりメイド姿になってしまって恥じらう、というギャグから次第にスライドして、実はエイジは童貞だった! という設定が語られ童貞のトラウマをいじくる物語に。大変に下らない(褒め言葉)設定でステキです。

 そして試練を超えて「萌え」の神髄をつかみ、童貞の中の童貞「最終童貞(ファイナルファンタジー)」として降臨したエイジ。彼の語る萌えの元に全ての童貞達が集う!

「萌えは童貞(ゆめ)を裏切ってはならない 童貞もまた萌えを裏切ってはならない」

「お前の心のおちんちんは まだつるつるのぴかぴかじゃないか」

 など、心震える(?)名言が。

 圧倒的な萌えを駆使する最終童貞・エイジに対して発動する最終兵器。その名は「彼女」。天敵とも言えるその「彼女」に対して最終童貞はどう戦うのか。

 そして――驚愕の最終回。全ては因果地平の彼方へ
 この凄まじい最終回は是非その目で確かめていただきたい。
 怒ってはいけません。
 この物語を受け入れられた人なら大笑いして受け入れられるハズだ!

 という感じで全編馬鹿らしさ溢れる作品。
 色々と遊び心というか、やり過ぎ感溢れております。
 FFっぽい表紙デザインなども大変に危険でステキ。
 帯の「カイン立ち」をしているエイジに大笑い。
 色々と笑って許して読める方限定で大変にオススメであります。
 個人的にはこういう馬鹿らしさには惜しみない拍手を送りたい。

 とにかく、今年一番の怪作と言っても過言ではありますまい。

ドスペラードドスペラード
大和田 秀樹

秋田書店 2007-07-20
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