COCO『今日の早川さん』

 個人blogで連載中の作品がネタにされている早川書房から書籍化。

 SF者で非モテ系の早川さん、ホラーマニアでちょっと黒めの帆掛さん、純文学読みの年増眼鏡の岩波さん、ライトノベル読者で見た目ロリ系の富士見さん、レア本好きで本人もレアキャラの国生さんという版元の特性をモチーフにした本マニア5人の本ネタまみれのおたく的日常を描いております。
(帆掛さんは創元推理文庫のジャンルマークの一つ帆船、国生さんは国書刊行会が元ネタ)
 「早川さん」なだけに、SFネタ多めではありますが、SFの素養は全くといって良いほど無い私でも十分理解できるレベルのネタなのでその辺は安心。

 本好きのおたくとしての彼女達の生態に、「こういう事ってあるよなあ」感が非常にくすぐられます。

 非おたくが自分の好きな分野について語っているときのツッコミを入れたくなる感覚とか、おたくの同士の知識レベルによる力関係とか、肥大してもてあまし気味の自意識とか、そういうおたくのどうしようもない業。その因業っぷりを、同類のおたくの視線から自嘲気味に、しかし愛を持って描いていおり、我が身を顧みて、ああ、そうだよなあと笑いがこぼれます。

 しかし、あるある感溢れる5人のやりとりから改めて感じましたが、ジャンルの近いおたく同士のコミニュケーションって、基本的には常に知識のレベルを問う隠微な勝負だなあ、と。
 仲が良くても、常に自分の知識はこれこれこうである、と相手に知らしめずにはおけないという。相手に通じること前提で仕掛けるマニアックなネタも通じればそれで良し、通じなければ勝ち的な。
 そこら辺のアレな業も描写しつつも嫌みになってない辺りは流石でありましょう。

 それにしても登場する4人の文学女子達のもっさり感ある可愛らしさは素晴らしいと思います。

今日の早川さん今日の早川さん
coco

早川書房 2007-09-07
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