有楽彰展『鬼切様の箱入娘』1巻

鬼切様の箱入娘 1 (ガンガンコミックス)

鬼切様の箱入娘 1 (ガンガンコミックス)

 主人公 伏緒綾史は蔵の中を掃除中に曰くありげな箱を見つけ、その蓋を開けてしまう。
 箱の中に入っていたのは一人の女の子。
 彼女の名前は千沙耶、三百年前に封印された鬼の娘。
 目覚めた彼女は綾史のことを「母親の仇」と呼んで襲いかかって来るのだった。

 鬼退治を生業とする「鬼切」の一族の使命として、三百年前に千沙耶の母親を殺した綾史の祖先 耶櫃。そして千沙耶は耶櫃とその鬼に生まれた娘だという。
 同じく蔵に封印されていた刀「鬼伏」に宿る耶櫃の意志を通じて過去を知る綾史。

 愛する娘を手にかけることになった耶櫃。亡き母を慕い父を仇と狙う千沙耶。そんな血筋を受け継ぎ今また鬼と再会した鬼切の少年。日本的因縁譚の遺伝子を持ったボーイミーツガール、ここに開幕。

 ―――とまあ、血と因縁めいた話からスタートしていますが、全体の印象としては明るく楽しいボーイミーツガール、といった感じであります。
 時代のギャップに戸惑いながらも強がりを崩さない千沙耶と、彼女の扱いに四苦八苦しながらも放っておけない綾史。なかなかほほえましい感じであります。コメディタッチでそういった部分を描きながらも、要所要所で鬼と人の間に生まれた千沙耶の哀しみや、耶櫃と彼女の因縁を持ってきてきっちりと話を締めています。そんな過去に苛まれる千沙耶を見て、彼女の力になろうと真っ直ぐ頑張る綾史も大変に気持ちが良いです。
 この1巻では学校に入ってきた千沙耶が騒動を巻き起こしたりとコメディ展開が多めですが、物語の核となる千沙耶の生い立ちの物語にこれからどのように還っていくか楽しみであります。

 それにしても鬼娘千沙耶に加えて、美人のお母さんがいたり、ツンデレ委員長に惚れられていたり、憧れの美人お姉さんがいたりと綾史君は大変に果報者です。巫女服のお姉さんの胸に顔を埋めたまま抱きしめられたり、鬼娘を風呂場で洗ってやっていたと思ったらいつの間にか「ここが気持ちいいのか?」と言われながら洗われる立場になっていたりとか、全く!

 箱の中の娘だけに
「なんだか酷く男が羨ましくなつてしまつた」