福満しげゆき『僕の小規模な生活』1巻

僕の小規模な生活(1) (KCデラックス モーニング)

僕の小規模な生活(1) (KCデラックス モーニング)

「漫画家の日常」を作者自身の日常を元に描く日記漫画。「モーニング」連載中。
 アルバイトをしながら漫画を書き続ける漫画家志望の「僕」と、頼りない「僕」に代って働きながら家計を支える年下の「妻」の生活を主軸に編集さんとのやりとりや、日常の些細な出来事を描いております。

 「僕」は収入をほぼ完全に「妻」に頼っているため、家での立場が非常に弱く、ご機嫌伺いをしたり、「働いといで」と云われれば、収入のため、というより「妻」の追求をかわすためにバイトを探してみたり。些細な事で怒らせてしまった妻を宥めてみたり。

 怒りながらも「僕」の反応を伺い、「私ばっかり働かせて!」と効果的に痛いところを突いて来る「妻」に対して、その様子を冷静に分析しながら「めんどくさいなあ」と思いながら表面上は真面目に謝る「僕」。

 そんな「妻」を分析できているのに、精神的とか頭の面では上に立っているつもりなのに、結局財布を握られているので頭が全く上がらず、何をするにもいちいちお伺いを立てている「僕」が何ともトホホでいじましい。

 他にも、近所に住む音楽を志すものの全く芽が出ない、というか芽が腐っちゃっているお兄さんと話をすることで密かに優越感を得てみたり。編集さんとのやりとりの中、言葉の裏や編集部に帰ってから陰で言われていることを想像して神経をすり減らしてみたり。

 とかく生じる周囲の人間関係の小さな軋轢を戯画化して描きつつ、ソレを客観視・分析できているにも関わらず、立場の弱さと気の弱さからトホホなことになってしまう様が、読者に笑いと情けない共感を呼びます。

 帯には著者自身の「マンガ家志望の人は、読んでおいて損はないですよ!」というコメントがありますが、マンガ家志望でなくとも読んでおいて損はないですよ!