いけだたかし『ささめきこと』1巻
- 作者: いけだたかし
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2007/12/22
- メディア: コミック
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優等生の眼鏡っ娘・村雨純夏は、親友の風間汐に片想い中。
その汐は「かわいい女の子が好き」な女の子ですが、純夏に対する認識はあくまで友人であり、その気持ちには全く気づいていなくて――
そんな女の子同士の恋愛感情を描いた「コミックアライブ」連載中の作品。
汐が女の子に対して報われない恋をしてきたのを、親友としてずっと見てきた純夏。報われない恋の結末に涙する汐の姿を自分に重ね、
「誰か私の好きになった人が 私を好きになってくれればいいだけなのになあ」
という彼女が漏らした言葉が強い実感を伴って鋭く胸に突き刺さります。
想い人の汐も「女の子が好き」なはずなのに、その「好き」の対象に自分は入っていないことを知っているが故に、自分の想いを隠して「友人」として汐に接する純夏の甘酸っぱくてほろ苦い想いを、切なくそして爽やかな筆致で描いております。
汐の好きなのは「かわいい女の子」であって、自分のような女ではない、彼女に自分の想いが伝わることなど無いのだから――と自分の立ち位置を決めてしまって、でも彼女に向ける純粋でひたむきな想いは如何ともし難く……と、勉強も運動も、何でもできるのに自分の想いの扱い方が不器用な純夏がとにかくいじらしく、可愛いいのです。
かわいい格好なんて似合わない、と思っているのに、汐のためにそういう服を着てみたり。
純夏が自分の事を好きだなんて夢にも思っていない汐から、全く悪気がないけれど残酷な言葉を投げかけられて傷ついても、結局彼女のために尽力してあげたり。
ああ、なんて愛おしい娘なのでしょう、純夏。
黒髪ロングストレートで眼鏡でオーバーニーソックスですし。完璧だ。
「カッコイイ」ことがコンプレックスになっちゃっているあたりもまた可愛い。
そんな純夏の周囲には彼女に想いを寄せていた女装少年・山崎アケミ(仮)が現れたり、口内で付き合っている蓮賀朋絵&当麻みやこの女の子同士のカップルが現れ、同じ恋愛観を持った者達で「女子部」を作ろうという話になったりと、コメディ要素も強く交えながら物語は展開。
「恋人とは二人きりがいいが 友達とは大勢の方が楽しい」
という朋絵から純夏に送られた感謝の言葉があるように、友情と恋愛、青春の1頁に刻まれていく大切なモノが賑やかに、ときにしっとりと描かれているのが実にいいのです。
「ささめきこと」のタイトル通り、純夏が心に秘めた密やかな想いがそっと語られる本作。その想いの純粋さと、それを秘密にする切なさにきゅんとしてしまいます。
果たして、純夏の想いは汐に伝わる日が来るのでしょうか。
所謂「百合」に分類される作品ですが、女の子同士の恋愛の柔らかさや繊細さだけでなく、その想いを伝えない・伝わらないことの切なさが中心となって描かれております。
非常におすすめの一作。