石黒正数『探偵綺譚 石黒正数短編集』
- 作者: 石黒正数
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2007/12/20
- メディア: コミック
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「コミックフラッパー」を中心に、様々な漫画誌からパチスロ誌まで、いろいろな雑誌に掲載された読み切りを収めた短編集。+幕間にラクガキを掲載。このラクガキがまたちょっとカオスで楽しかったり。
以下、収録作品の感想を。
「探偵綺譚」(「コミックフラッパー」掲載)
表題作には歩鳥と紺先輩が登場し、同級生の失踪を追ってご町内を調べて回るという「それ町」の原型というべき作品となっております。ミステリ風味の展開に、バカバカしいオチの付け方とかは大変に楽しい。プロトタイプ歩鳥は今の歩鳥よりもだいぶアホの子成分が低めです。
「スイッチ」(「コミックMAGNA」掲載)
体内に爆弾を埋め込まれた実験体「ボマー」。友達になったボマーに起爆ボタンを託された男子高校生だが、自分が目を付けてられている不良に絡まれているその友人を見、起爆ボタンに指がかかるが――
押の押さないのという緊迫感と、思わず「ぎゃふん」と言ってしまうようなオチ。この軽快さがステキです。
「14歳 性の相談室」(「チャンピオンREDいちご掲載」)
男子中学生のリビドーと、それに起因するバカな行動を活写した傑作。「あのコがブラをしているかしていないか」それを聞いた結末は。うーん、小気味良いまでにバカで、そして青春しております。
「気の抜けたビールで…」(「モーニング2」掲載)
ハードボイルドとは何ぞや、という問いを逆手に取ったパロディ。結果としてハードボイルドになるのではなく、ハードボイルドな男になるのを目的とした刑事の滑稽な事件簿。見習い君もすっかりハードボイルドになって良かった良かった。
「カラクリ」(「コミックラッシュ」掲載)
カラクリ人形として生き返った爺さんと、登校拒否の孫娘のお話。活動を停止した爺さんの体内から出てきたモノは――。
ばかばかしい道具立てと、ほろりとさせるエピソードのバランス。
爺さんの想いと、それを受け取った孫の決意がまたいい。
個人的にはこの単行本の収録作品の中で一番好きです。
「血の連判状」(「コミック戦国マガジン」掲載)
傘連判状に秘められた歴史の裏側! ――って、おバカ!
「スペースレンジャー・ゴーファイブ」(「コミックフラッパー」掲載)
ご町内に現れた怪人を迎え撃つは、正義の味方スペースレンジャーゴーファイブ! しかし、怪人側も仲間を用意してきていた! しかし、ゴーファイブ側は――
ご町内感覚と、シャレ混じりのバカらしさが石黒正数っぽいというかなんというか。ファイトクラブ、略してファイブ!
「修学旅行」(「コミックフラッパー」掲載)
修学旅行中にいろいろな事が反転するという状況に見舞われる、というお話。ブス山さんの告白決意からはじまり、迎える結末は――凄いホラーだこれは。
「薄暗い穴の底から」(「ガンガンWING」付録掲載)
深い穴の中に落ちた少年と少女。少年の発明品によってこの窮地を脱する事ができるか――小さな一つのネタと世界観のマッチングで話を作る手腕がが上手いなあ、といつも思うのです。