滝沢聖峰『Tale of Rose Knight 〜ばら物語〜』1巻

Tale of Rose Knight―ばら物語〈Vol.1〉

Tale of Rose Knight―ばら物語〈Vol.1〉

 16世紀、フランスと神聖ローマ帝国の間で行われたイタリア戦争。両軍が激しい攻防を繰り返すロンバルディアの地で出会った騎士団長ロザリアと、砲兵隊を指揮するローザ。二人の薔薇の名を持つ少女の絡み合う運命と戦乱の行く末は――

 太平洋戦争の戦記物の泰斗、滝沢聖峰が今作で選んだ題材はイタリア戦争。ただ、歴史に取材しつつ、登場人物は架空、イベントも架空のフィクションとなっております。

 ロザリアとローザ、戦場を駆ける二人の女性の運命を軸に、フランス軍ローマ帝国軍の戦を精緻な筆で描きますが、その戦闘描写が圧巻。
 隊伍を整えた長槍兵の激突、そこから始まる乱戦、歩兵を薙ぎ払う砲火、刻々と移り変わる戦況。敵軍を前にして、微妙な力関係を背景に、様々な思惑が交差し交渉・戦いの中で駆け引きを展開する諸軍。

 さすがは滝沢聖峰、と唸らされます。衣装や道具なども、資料に基づいた確かな描写で説得力があります。

 この1巻で描くのは、ロザリアとローザの運命的な出会いと、それによって運命の歯車が動き出すところまで。まだまだ物語は動き始めたばかりで現時点ではちょっと地味な印象はありますが、骨太な物語とこの後待ちかまえているであろう大きな運命のうねりに期待せずにはおれません。