宮下英樹『センゴク外伝 桶狭間戦記』1巻
- 作者: 宮下英樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/02/06
- メディア: コミック
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今川義元と、彼を補佐した禅僧 太原雪斎のコンビを主人公に据え、桶狭間の戦いに至るまでを描く歴史漫画。
漫画やゲームやドラマなどのエンターテイメントの世界では、桶狭間の戦いというと、信長台頭の契機として織田家の視点から描かれることが多いですが、本作は今川家側の視点で描いているのが興味深い。
名門の出身故にいいとこの坊のような頼りない人物として描かれることが多かった今川義元も、乱世を生きるに足る柔軟で現実的な思考と、子供のような天真爛漫さを併せ持った魅力ある人物として描かれております。その彼を一流の戦国武将に磨き上げていく雪斎の堅さが好対照をなしていて面白い師弟コンビに。
様々な説と資料を引き合いに出しながら、戦国時代とは、今川家とは実はこうだったのではないか、という物語を積み重ねていきます。専門家ではないので、その資料の妥当性などはよく分りませんが、今までに無かった切り口で語られる今川家一代記はなかなかに刺激的。
「乱世とは果てるまで命を燃やす遊び場である」という言葉に代表されるように、戦国大名を統治者というよりは、男の遊びの最も大きなものに挑戦する者達として、男の器・能力比べ的な部分に比重を多めにおいて描く本作。その姿勢と、人物描写の独特さで好き嫌いが分かれるかも知れませんが、今まで多くの作品で取り上げられた「桶狭間」を新たな視点で捉え直し、今までと異なる切り口で描いているのはやっぱり興味深いのです。
この1巻では今川家の五男として生まれた義元が紆余曲折を経て当主の座を手に入れ、織田家との抗争が始まるまでを描いております。
誰もが知っている桶狭間の戦いの結果に向けて、この義元がどのように描かれるか、そして雪斎は彼をどう導くのかなど非常に興味深いです。