谷川史子『東京マーブルチョコレート ハロー、グッバイ、ハロー』

東京マーブルチョコレート ハロー、グッバイ、ハロー。 (ワイドKC)

東京マーブルチョコレート ハロー、グッバイ、ハロー。 (ワイドKC)

 幼なじみの男の子に密かに恋していた女の子と、共通の友達だった女の子を親友と同じく好きになってしまった男の子。
 友達関係の続く中で、タイミングを逃して伝えられなくなってしまった想い。男女それぞれの視点から描きます。

 ずっと好きだったはずなのに、自分の気持ちに気付いたときにはいつの間にか相手には大切な人が出来ていて、でもそんな自分の想いに蓋をして仲の良い友達の関係を続けている女の子。

 相手が好きだけれど、親友も同じ相手を好いていることを知っていたので、ほんのちょっとのすれ違いでその恋を譲ることになってしまった男の子。

 友人という居心地のいい関係を壊すことが怖くて、どちらも想いを伝える前に自分で終わりと線を引いてしまった恋ですが、その想いをふと相手に伝えることができる機会が生まれたとき、そこに生まれるのはやっぱり実らない恋の結末なのではありますが、しかし、その後味は決して哀しく辛いものではなく、ほろ苦くはあっても、優しく暖かな相手への思いやりに満ちております。
 遺恨や未練を交えて描けばいくらでも湿った話として描けそうな筋ですが、そういうのは一切無し、ちょっと切ないながらも、次の一歩を踏み出す優しくも力強い、希望に満ちたお話に。ああ、胸にキュンとくることであるなあ。とても心が潤います。

 『くらしのいずみ』で初めて谷川先生の作品に触れた身ですが、こちらも大変に心に迫る物語でありました。漫画文庫として刊行されてもおりますし、これを機に既刊もいろいろ読んでおこうと思います。