南條範夫/山口貴由『シグルイ』10巻

シグルイ 10 (チャンピオンREDコミックス)

シグルイ 10 (チャンピオンREDコミックス)

 牛股師範対伊良子の息詰まる対決と凄絶な決着を描くこの第10巻。
 第一巻の冒頭から、どちらが勝つのかもう読者は知っているわけですが、それでもこの戦いの緊張感と、凄惨極まりない描写、度肝を抜く展開に圧倒されっぱなしであります。
 この勝負、牛股は人間であることを捨て戦いの鬼と化していたように見えながら、実はきちんと人であり続けていた、というのが実に切ない。

 そして仇討ちの場の勝負が決した後の牛股師範の再登場には本当に驚きました。まさかこんな展開になろうと誰が予想し得ましょう。

「臓器にも記憶は宿る 筋肉とて人を恨むのだ」

 と、再び伊良子に襲いかかる牛股師範。雪千代ならずとも「牛股権左……あれは人にござるか?」と言いたくなります。恐ろしき執念であることだなあ。

 そして、腕を落とされた藤木の傷口の縫合の描写がまた凄まじい。読者までもが痛みを覚えそうなくらいにゴリゴリとやっております。よくぞここまで――。

 とにかく濃縮された感情・情念が絡み、激しくぶつかり合うこの物語、まだまだ目が離せません。