湯浅ヒトシ『耳かきお蝶』
- 作者: 湯浅ヒトシ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2005/07/28
- メディア: コミック
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今まで感想を書きそびれておりましたが、先日発売となった4巻で完結ですので、これを期にまとめて感想などを。
江戸の町で耳かき屋を営むお蝶さん。その膝枕と指遣いはあらゆるお客心を解きほぐし、優しく癒す心地よさ。そんなお蝶さんと彼女の店に立ち寄る人々を描いた江戸下町人情コメディー。
艶っぽくも明るくお茶目なお蝶さん、くるくるはきはきと良く動くおつるちゃん、すっとぼけた味わいと凄い技を持った日向の旦那、真面目で実直ないい男の正吾さんなどの主要登場人物を始めとして、侍から商人まで立場も身分も異なる多くの人たち。「耳かき屋」という一風変わった舞台にお蝶さんと正吾さんの恋模様を軸として、江戸の町に暮らす様々な人々が織りなすドラマが綴られます。それぞれのエピソードは大きなものではありませんが、これが笑いあり、涙あり、実に人情味に溢れた話ばかり。
江戸の習俗と、そこに暮らす人々を丹念に描きつつも、時に大胆にデフォルメとポップなギャグを織り交ぜて明るく軽妙な空気を作り出しているのが素晴らしい。優美且つ思い切りの良い線が色気を感じさせて、画面も実に華があります。
爽やかな余韻を残して物語は完結していて、実に素敵な終わり方なのですが、でも、もっとこのお蝶さんたちの物語を見ていたかったなあ、という思いも強く。
もっと多くの人に読んでもらいたい、実に素敵な作品です。