桂明日香『花やしきの住人たち』1巻

 家事が得意な青年 桜安芸は、遊び人の父親の失踪により、祖父が理事長を務める女子校の寮に住むことに。
「男なら女を侍らせて当然」と宣う祖父に対し、「女とは守るものだ」という安芸。しかし、その女子寮・通称「花やしき」の住人たちはくせ者揃いで――。

 「月刊少年エース」連載。女子寮に男が一人ということで、ハーレムものかと思いきや冒頭で主人公が自らの言葉でそれを否定。女子だらけの中の黒一点として数多のトラブルあり、ちょっと気になる娘も出来、と波乱の女子寮生活が始まるのでした。

 物語はお肉に目がないちょっと変な少女 蓮華と、クールな男嫌いの少女 あやめ、この二人の少女と安芸を中心に展開。
 安芸に懐いている(お肉で餌付けされている)蓮華はいつもハイテンションで愉快で優しいムードメーカー。でもそんな楽しい関係に紛らせて、本当は安芸に想いを寄せていて。
 でも安芸は自分に対して剣呑な言動をとるあやめがなぜか気になっていて。
 そしてあやめは蓮華に特別な感情を抱いていて、そのうえワケアリで――
 と形成される三角関係。今はまだそれぞれが自分の想いをはっきりと形に出来ず、おぼろげに胸の内に抱えているだけの微かな関係ですが、じきに大きく動きそうな気配を秘めております。

 そんな三人の微妙な恋の空気を孕みながらも、今のところは、慣れない環境のうえに曲者揃いの女性陣たちに翻弄される安芸の生活を華やかに愉快に描いております。
「女というものは清楚可憐で慎ましく思いやりがあり男が守ってやらなくてはならないものだ」
 という安芸の観念がガラガラと崩れていく様は可笑しくもあり、(男にとっては)どこか哀しくもあったり。

 愉快な日常と微妙な三角関係。そこにちょっとワケありの過去の影が差して物語はどう転がっていくのか。大変にこの先が気になります。