施川ユウキ『12月生まれの少年』1巻

12月生まれの少年 1 (1) (バンブー・コミックス)

12月生まれの少年 1 (1) (バンブー・コミックス)

 主人公は無口な少年・柊(しゅう)。自らの誕生月の12月から始まり、月日の移ろいとともにその時々の身の回りの物事に対する思索する様を描く4コマ漫画。

 施川先生の作品らしく、身の回りのふとしたことに、時に詩的で時に哲学的な思索を巡らす主人公の柊君。その思索がぐるぐるとまわって、でも回り回って変な着地点に達してしまう所におかしみがありますが、柊君はとても無口。この1巻全頁を通じて2〜3コマしか声を発しているシーンが無いくらいに無口な男の子ですので、本人としてはぐるぐると脳内で雄弁に思索を巡らしていても、外から見ると凝っとしているようにしか見えません。
 そんなぱっと見静かで、しかし内面で激しく思考する彼に対して、外から投げかけられる友人や家族からのまた違った考えを含んだ言葉とのギャップが実に微笑ましく愉快であります。

 『サナギさん』がサナギさんフユちゃんら友人達とのダイアローグによって思考を共有してちょっと面白げな方向に転がしていくのに対して、この『12月生まれの少年』は、モノローグ的に突き詰めて考えていったことが突如他の思考とぶつかることで生まれる可笑しさ、とでも言いましょうか。
 微笑ましくて、時に鋭く、時にちょっと深くて、でもやっぱり何だかかわいい柊君の思考に読んでいると笑みが漏れます。

 そして後書きとして収録された施川先生の文章がまたいいですなあ。実に読ませます。