鈴木マサカズ『ラッキーマイン』1巻

 三十路手前のプー太郎・鴨次七男。パチスロで日銭を稼いでいた彼が、謎の美女アゲハ、そしてイカれた富豪の灰澤とであったことにより、人生の流れを変えるギャンブルに挑む。

 「コミックビーム」で『サルぽんち』『無頼侍』を連載していた著者が「モーニング」で描くのはギャンブル漫画。
 ギャンブル漫画といっても、そこでクローズアップされるのは勝負の駆け引きといったテクニック的なものではなく、「運」と「決断」の部分。

 宝くじに当たった幸運の余勢を駆り、冴えない人生の「流れを変える」という理由でリスクの高いギャンブルに挑む七男。そこからして運と決断の物語が幕を開けているわけですが、そのギャンブルを取り仕切る男・灰澤のキャラがまた強烈。物腰優雅な紳士に見えて、「幸運の鉱脈」という意味深な言葉を口にし勝負者たちの「幸運」に異常な興味を示し、時に酷薄な言動をとる危険でイカれた人物として描かれ、彼がそこまで幸運を持った人物達に拘る理由は何なのか――という謎が物語を引っ張ります。

 一筋縄ではいかないクセの強い登場人物達、シンプルなだけに異様な緊張感を伴う勝負の決断、そして勝敗を左右する「運」の描写。
 冴えない男の運が招き寄せた異常な勝負の世界、その先に待つのは何か、と非常に先が気になります。