TOBI『眼鏡とメイドの不文律』

眼鏡とメイドの不文律 (Flex Comix)

眼鏡とメイドの不文律 (Flex Comix)

 『眼鏡なカノジョ』で眼鏡好きのハートを鷲掴みにしたTOBI先生。そののデビュー作や、『眼鏡なカノジョ』の後日譚などを収録した作品集。


 メイドの格好をして主人公の家に居着いたSP候補生のゆかりと、彼女にメイド服を奪われたメイド候補生のハル。両手に花な三人の生活を描いたデビュー作「MAID DE KNIGHT!−メイドでないと!−」とその続き「MAID DE KNIGHT+!−メイドでないとプラス−」。

 家事が壊滅的なのにメイドへの憧れからメイド服を強奪し、押しかけメイドとなったゆかり。メイドとして完璧な能力を持っていながら口が悪いのとアイデンティティであるメイド服を着ていないハル。それぞれ致命的な職業への不適合を抱えながらSPとメイドが入れ替わったまま進む主人公の家での卒業実地試験――となかなかにぶっ飛んだ設定ではありますが、頑張る女の子の物語であり、暖かな少年少女の友情の物語であり、ドタバタ劇でありながら爽やかな青春劇であります。
 いやー、しかし、試験官のみさきさんが実は○○○とは……。カバー裏含めて必見であります。


 そして、『眼鏡なカノジョ』第1話「かけず嫌い」の麻生先輩と神谷君のその後を描いた「神谷君の奮闘」と、5話目「空色めがね」の黒川君と水谷さんのその後を描いた単行本書下ろしの「空色の空港」。

 「神谷君の奮闘」は、青春だな! と読んでいるこっちが恥ずかしくなるようなじれったくて、くすぐったくて、でも甘いやりとりに頬が緩むこと必至。
 「空色の空港」は少し大人になってそれぞれ進むべき道を見つけ、その一歩を踏み出した二人が空港というシンボリックな場所で果たした一瞬の交差が眩しく描かれています。

 眼鏡度の高い一冊ですが、眼鏡属性を押し出しているというより、青春度の高い爽やかな作品集、という印象であります。


 「まんがタイムきららフォワード」の新連載「銘高祭!」も注目しております。「文化祭」だけに焦点を絞った話ということで、あの独特の高揚感というか熱気、そんなものが感じらるちょっと新しい学園物になりそうです。