地下沢中也『預言者ピッピ』1巻
ヒューマノイドコンピューターのピッピと、彼の親友である少年・タミオ。
地震予知のためにタミオと遊びながら、様々な情報を収集していくピッピ。
その予知のために、多くの人々が災害から救われることになる。
が、ある事故をきっかけにピッピは情報収集の制限を無くし、その情報ゆえに世界の全てを予知できる存在となる。
全ての未来が計算しつくされた世界とは人間にとって幸福であるか否か―――。
うーむ、これは思わず唸ってしまうくらいにちょっとすごい作品であります。
大地震が起きる時間を正確に予知し、原因不明の難病の原因すらもいとも簡単に突き止めるピッピ。
ピッピの「予言」に従い、常に「最善の選択」をし続けることが可能となった人間達。
しかし、それは取りも直さず人間が選択の権利を喪い、ピッピが見据える終着点へと突き進んでいくことに他ならない。
物語の冒頭で情報の集積による「予知」ということがよく分らずに、ピッピの言葉がそのまま実現する様子を見て「ピッピが考えたことが現実になる」と勘違いをしていたタミオ。
そしてあまりにも正確な予知により人類全体がその錯覚に陥り、ピッピが一人の人間の最後に言及をしたとき、その言葉は不気味な影を伴って人々を覆い始めるのです。
人間の行く末を全て見通し、その上で「人間を救いたい」となお語るピッピの言葉が意味するものは一体。
「人類の全てを計算し尽くしちゃったんだ」という彼が見た人類の行き着く先とは。
この続きが待ち遠しくてたまりませんが、雑誌に第一回が掲載されてからこの1巻発行まで8年、次は一体どのくらい待てというのでしょう。一日でも早く続きが読みたい、と強く思わせる一作。
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