「コミックビーム」07年6月号

吉田戦車「宇宙巨人アムンゼン
 今度はカンピョウ怪獣「ピョカゴン」が出現するも、カンピョウなんて安い食材は獲ってらんねえ、と無視を決め込むが――
 食欲と金銭欲に忠実なアムンゼンが何ともダメでステキです。かんぴょう怪獣も上位スシ怪獣の姿を見ると気後れしてしまうとか大変に馬鹿らしくてステキ。
 吉田戦車の漫画はどれも味があっていいなあ。

森薫「エマ 番外編」
 休日に町へ出たメルダース家のメイド、ポリーとアルマ。
 同僚から頼まれた買い物をこなしつつ、自分の買い物も……というお話。性格の違う二人のやり取りが楽しい。
 ヴィクトリア朝の街並み、店の様子、商品がとても丁寧に描かれていて「ああ、この時代の風俗というのはこういうものだったんだ」と素直に納得してしまう説得力があります。一体どれだけ資料を当たったんだろう。

タイム涼介アベックパンチ
 自分たちをのしたカップルが、実は「アベックパンチ」というスポーツのプロ選手だと言う事を知ったイサキとヒラマサ。
 二人の通うスポーツジムを突き止め殴り込みをかけようとするが、ヒラマサが勇んで電話を掛けて「道場破り」と口走ってしまったため計画はオシャカに。
 結局、試合当日会場に直接乗り込むことになったが、そのルートをイサキが一人で調べているとかつて痛めつけた不良達に出くわしてしまい……そして、遂に殴り込み開始!

 タイム涼介が描くのはいつも「普通」から逸れた者達の、しかしとても真っ直ぐな青春ストーリーなのだなあ、と思うのです。どうしようもなく不器用な者達のやり場のないモヤモヤを真っ直ぐな形でしか表現できない者達を滑稽でどこか哀愁を帯びて描いております。
 早く単行本にならないかなあ。

■入江亜紀「群青学舎」薄明 前編
 図書室に籠もって本ばかり読んでいる病弱な青年・万里雄と、彼の馴染みらしい少女・青子の話。
 本ばかり読んでいる万里雄に複雑な思いを抱いている青子だが、やがて万里雄は入院してしまい、主のいなくなった図書室で、彼の読んでいた本を読み始め、自分の中での彼の位置を確認する。
 冒頭で既に万里雄は亡くなってしまっている事が語られていますが、さて、後編でこの冒頭にどう繋がる物語となるか。楽しみです。

新谷明弘「出会い系ロボ」
 新黒死病によって人口が激減した世界で、「出会い系ロボ」を使って交際相手を探す少女達。誕生日に母親から旧式の出会い系ロボを送られた少女。
 母親が自分の夫を捉まえた、というこの旧式ロボはセレブなお嬢様達の強力なロボには太刀打ちできず、なかなか男をゲットできないが……
 新谷明弘らしい妙な味がある世界観の未来。出会い系ロボ、という妙ちきりんな設定だけでも和みます。ラスト付近でポロリとロボが漏らす真実もまた気が抜けてていいなあ、と。

カイトモアキ「奇術師と怠け者」
 奇術倶楽部の部長と、そこに入部希望を出した男女二人の新入部員。ヌルい技を見せた女子と、「それは超能力だろ」と言われた男子。一年が経ち、部長の引退に際して入部試験の時と同様その技を披露する事になった二人だが――。
 いやー、この人の作品はやっぱりいいなあ。この強烈な絵柄がまたたまりません。
 努力が成就した女子部員と、才能があった故に努力ができなくなってしまった男子部員。凄い事を出来るが人間として「努力」が出来ない事に引け目を感じる男子部員に下した部長の判断とは。最後にはなった部長の一言が実に振るっています。

金平守人「かねひらでCHU」 角川書店コミックチャージ」で絶賛連載中の金平先生。
 いやもう、自虐なんだかネタなんだか……。
 でも私は応援してます。