水上悟志『惑星のさみだれ』3巻

 師匠・兄貴的存在だった東雲半月を喪った夕日の前に現れた、カラスの騎士で半月の弟でもある東雲三日月。だが、彼は兄とは似ても似つかない性格が壊れ気味の戦闘狂であり、同じ獣の騎士の夕日に戦いを挑んできたり、姫に「惚れた!」宣言をしてしまったりと滅茶苦茶で―――

 という感じで、新キャラ大勢登場の第3巻。物語をかき回す三日月だけではなく、騎士団のまとめ役的な馬の騎士・南雲宗一朗や、銀髪のお姉さん・蛇の騎士の白道八宵、そして黒猫の騎士や亀や鶏、カマキリにネズミ、フクロウの騎士まで獣の騎士団が一気に登場。そしてこの惑星を砕く「ビスケットハンマー」を作り出した魔法使いまで登場し、物語は急展開を見せております。

 戦いの中で師匠でもあり、友人でもあった半月を喪った事への恐怖と後悔から抜け出せないでいる夕日。そんな夕日が如何にこの状態を脱し、成長していくかに注目。

 そして、この3巻で滅茶苦茶なインパクトを放っている三日月。ブッ壊れた性格の戦闘狂であるにも関わらず、どこか無邪気で憎めないところがあります。兄とはまた違った意味で夕日の成長の鍵となる人物であります。

 その他にも、「私は無職だ」と堂々と言い放つ南雲や、お姉さん的存在の八宵、彼女と行動を共にする蛇のシアの物事へのこだわらなさ加減など新キャラ達も魅力的。どこか人を食ったような飄々とした感じがあるキャラクターというのは水上作品の大きな魅力でありましょう。

 後半に怒濤の如く登場した他の獣の騎士達はまだどういうキャラなんだかまではよく分りませんが、次巻以降の彼らの言動に期待。それにしても「カジキマグロの騎士」が一体どんなのだったのかが非常に気になります。地上で一体どうやって……。

 もう一つの興味は姫と夕日の関係。
 絶対の忠誠を誓う従者と主という関係でもあり、互いに気になる関係でもあり、というじれったい二人。
 夕日をからかうつもりでいても、見つめられると照れてしまったり、夕日が時折見せる男らしい表情にドキッとして頬を赤らめる姫が何とも可愛らしいですわね。
 そしてこの巻のラスト夕日が様々な経験を乗り越えて、姫の問いかけに忠誠の言葉を捧げ、己の決意を刻むシーンに、これからの展開が気になって仕方ありません。

惑星のさみだれ 3 (3)惑星のさみだれ 3 (3)
水上 悟志

少年画報社 2007-05-28
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