佐藤信『ソードゲイル』1・2巻

 新刊ではありませんが、以前から人に勧められたものの、なかなか見つからずにいたのをようやく手に入れたので。
 どこの本屋にも1巻が置いていなくてえらい苦労しました……。

 剣の力が支配する世界、イグラウ。
 その大陸の東端に位置するフェレー王国は小国なりに安定した治世が続いていた。
 しかし、ある日大陸一の強国・ベルジェ帝国がフェレーに向けて軍事行動を開始、その軍勢は王都へと迫る。
 迎え撃つフェレー軍には先の騎槍試合で優勝した騎士・フレイの姿があった――。


 フェレー王の庶子でありながら、王位継承権を持たず、一騎士として戦場に立つフレイ。彼を主人公として二国間の戦を描いております。
 フレイの軍略によって善戦しながらも、圧倒的な戦力差によって追いつめられるフェレー軍。地方領主ボレアス伯の居城に拠って援軍を待つが、城門を突破されてしまい――というのが2巻までのお話。

 身分的には一介の騎士に過ぎないフレイですが、フェレー王の負傷により指揮を任される事に。この辺の展開も冒頭に描かれた騎槍試合で見せたフレイの才能と度量によって納得できるようになっているのが巧いなあ、と。その彼が展開する策も戦術的に現実味と説得力があって、実に読ませる展開に。

 フレイの生い立ちや彼を取り巻く状況が物語に更なる色彩を加えております。王国一の騎士であり師匠でもあるアストレイとの関係が実に良いですね。

 中世ヨーロッパ的世界観の架空の世界を舞台とした作品ですが、魔法や魔物といったファンタジー要素は一切登場せず、あくまで軍隊と軍隊同士の「戦」を扱った骨太な戦記物となっております。オススメ。

 刊行ペースを見るとそろそろ3巻が出そうな時期でありますが、とても楽しみです。

SWORD GALE(1) (KCデラックス)

SWORD GALE(1) (KCデラックス)