惣本蒼『呪街』1巻

 人を呪い殺す力を持った者達が集められた町・呪街。
 強力な力を持ち、呪街の四天王の一人に数えられる笠音。
 呪力に覚醒したばかりで力の制御ができず、徒歩で呪街を目指す少女・禾橋優愛菜
 呪街で生きる笠音の物語「呪街」と、呪街を目指す優愛菜の物語「呪姫」。同時進行する呪いの街を巡る物語。呪力を宿した二人の少女が出会った時に何が起こるのか―――。

 呪力による殺し合いが横行する呪街。その呪街で己の力を使って生き続ける笠音と、目覚めたばかりの自分の力に戸惑いながら呪街を目指す優愛菜。一方は己の力を理解し殺すことに慣れた女。もう一方は己の意に反して周囲を傷つけてしまう事にショックを受けている少女。二人の対照的な人物を使って「呪街」という特殊な場所を内側と外側から描いております。
 笠音には能力に目覚めて呪街に連れてこられたばかりの少年・碁石真魚を、優愛菜には呪力者を移送する役割を持ち、呪力者について良く知る少年・火詠を配するなど、呪力の素人と玄人を、ちょうど反対の像を結ぶような配役となっており、興味深い構造となっております。

 この作品で扱われる「呪い」は、地縁・習俗に結びついた土俗的社会装置のそれではなく、目に見えない力で相手に影響を及ぼす超能力のようなもの。「呪い」という言葉から土臭いものを期待すると肩すかしを食らいますが、ダークな超能力もの、として捉えればなかなか。
 目に見えない力をぶつけ合う呪力者達の戦いはアクションこそないものの、悪意に満ちて歪んだ表情などはなかなか毒々しくて見応えがあります。

 荒削りな絵と設定ではあるものの、黒々とした重い雰囲気は魅力的であります。

呪街 1 (1)呪街 1 (1)
惣本 蒼

講談社 2007-06-22
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