中山昌亮『泣く侍』2巻

泣く侍 2 (SPコミックス)

泣く侍 2 (SPコミックス)

 次席家老の陰謀によって、親族を殺された上、反逆の罪を着せられた物辺総次郎。
 真実を明らかにするため、総次郎は姪の沙絵を連れて藩を出奔し江戸へ向かう。
 その二人を追うのは復讐鬼と化したかつての親友・伊藤清之進。
 信念を貫く男と、妄執に駆られる男。
 二人の道行きの果てに待つ結末は―――。

 『PS羅生門』『不安の種』の中山昌亮が「コミック乱 TWINS」で連載中の時代劇コミック。(→1巻感想
 哀しみ、怒り、様々な感情を込めて慟哭の剣を振るう総次郎と、彼に対する妄執で狂気の剣を振るう清之進。かつて親友として共に剣を学びながら、追われる立場と追う立場となり、全く異なる剣を振るうことになった二人の侍の物語。

 この2巻では忍に襲われて窮地に陥った総次郎と、彼を助けた旅芸人の一座の話が描かれております。

 修羅の道行きの中で、一時の憩いの場を見つけた総次郎と沙絵。
 一見ただの好々爺、しかし実は凄腕という一座の頭・蟻助と、忍の一団の因縁。
 総次郎を斬るために清之進を利用する忍の頭・梟。
 ただ清之進を斬ることだけを目的とする清之進。
 様々な人物達の思惑・因縁が絡まり、物語を織りなす糸はより複雑、そして鮮やかに。

 今回は毒に倒れて見せ場少な目の総次郎ですが、その感情の詰まった剣と、涙がこぼれ落ちる瞬間の描写の見せ方、ひたすら総次郎への妄執に憑かれて彼を追い求める清之進の姿の凄絶さ、蟻助が時折見せる凄みなど力強い筆遣いで描かれる登場人物達の描写が素晴らしい。特に表情。
 アクションも、一瞬で勝負が決まる真剣勝負のスピード感が絶妙に表現されております。
 兎に角、話も絵も巧いなあ、と。

 時代劇モノということで敬遠する人もいるかも知れませんが、これは是非読んでいただきたい一作。
 王道ながらも骨太の物語と、迫力ある絵が素晴らしい一作です。