田中ユタカ『ミミア姫』1巻
光の羽根を持ち、念話で互いの心を繋げるなどの「ちから」を持った人々が暮らす雲の都。
その中に何の「ちから」も持たず、小さくか弱い異質な存在として生まれたミミア。
念話によって高度なコミュニケーションを築き、運命さえも予知している人々の中でただ一人だけその未来が全く分からない彼女は、人々の原初の姿を持った「神さまの子」として育てられる。
そんなミミアの物語を綴るファンタジー。
小さくか弱い存在の彼女に対して、あらん限りの愛情を注ぐ両親と、雲の都の人々。その無私の愛情・生命への賛歌とでも言うべきものの描写の真摯さに、この作品で描こうとするものへの著者の本気を感じます。
天国とも称される雲の都の文化や風俗の描写もしっかりとした設定に基づいて描かれている感が強く伝わってきて、そこで展開する物語に説得力を与えております。
この1巻で語られるのはミミアが11歳の誕生日を迎えるまでの話で、様々に複線が示されてはいるもののまだ物語が動き出す前の序幕といった感じ。
ここからどのような運命がミミアを待つのか、非常に興味がそそられます。
田中ユタカの本気の物語がここに。
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