武梨えり『かんなぎ』3巻

 へっぽこ愉快なコメディを展開しつつも、ナギ様は一体何者であるのか、という謎を巡ってシリアス方面にも話が転がり始める第3巻。

 つぐみのうっかり発言によって同性愛者疑惑が持ち上がってしまった仁。つぐみの暴走っぷりや、周囲の無責任な面白がりっぷりが愉快。
 その誤解を解くべく頑張るつぐみ。幼なじみキャラとして健気に仁のことを想っている彼女ではありますが―――なかなか報われない不憫なキャラであります。

 仁の裸を目撃してしまった後のつぐみとナギの「子供の頃とはもう違うんだなー…って」「興味がある」という会話や、その後に続く生まれたままの姿の赤ん坊の仁の写真を見ての
「この頃とはもう違うということですね」
「成長とは驚くべきことじゃのう」
「仁 かわいかったのよ」
「今は?」
「今もかわいい」
「おおー」
 という一連のやりとりなど、お嬢さん方、一体何を言っているのですか感あふれる愉快さは素晴らしいものがあります。そうか、仁は「子供の頃とはもう違」っているけど今でも「かわいい」のか……。
 それにしても、裸を見られてしまったり羞恥プレイの的になってしまったりと、実は女性陣よりも仁の方が「ヒロイン度」は高いのかも知れません。

 そんな中、ひょんなことからナギが失踪。
 自分が何者なのか説明することができず、仁の心にもナギは本当に神様なのかという疑惑が。
 それらの問題を乗り越えて、仁とナギの関係は一つ進展しますが―――うれしはずかしの展開の中、やっぱり報われない役どころのつぐみが不憫でなりません。

 そんな感じで微妙にシリアスな方向に展開しつつあるストーリーを妙な間が魅力的なギャグで包んだ本作。この3巻の後も物語の核となる謎に触れるシリアスストーリーが展開されていくわけですが―――今月号のREX(07年9月号)を見るに、またギャグに戻っていたりとやはり土台としてギャグは捨てない模様。
 カラオケの回などでも発揮される妙な味のギャグセンスとか堪らなく好きです。すっきりとした線で綺麗で可愛らしい絵柄でありながら、この辺の妙なセンスは何というか非常にクセになります。

かんなぎ 3 (3) (REX COMICS)かんなぎ 3 (3) (REX COMICS)
武梨 えり

一迅社 2007-08-09
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