佐藤信『SWORD GALE』3巻

軍事行動を起こしたベルジェ帝国を迎え撃ったフェレー軍。
 敗れたもののフレイの策により王とともに逃走に成功した一部の軍勢はボレアス伯の居城に落ち延びることに。

 小さいながらも堅牢な城と、フレイの優れた指揮によって何とか持ちこたえるかに思えた戦も、シモンの計によって内側から城門が開かれてしまう。
 外郭を放棄し内郭に拠って圧倒的な大群に対して最後の抗戦を試みるフェレー軍だが、落城は時間の問題というこの状況でフレイ達の決断や如何に――。

 と、ベルジェ軍に包囲されたフレイらの籠城戦を描く第3巻。
 籠城、開門、外郭撤退、城館前最終抗戦――と刻一刻と変化(悪化)する戦況、またそれに伴って移り変わる登場人物達の心境が熱い。

 戦況の悪化とともに厄介ごとを城に持ち込んだフレイらを責め始めるボレアス城の民衆達。
 外郭放棄で時間を稼いでいる間に抜け穴からお偉方ではなく民衆を逃がすことを選択するフレイ。
 自己の保身と利益を優先してきた野党上がりの城主・バリー伯爵が漏らしてきた一言。
 負け戦の緊張感と一種の昂揚、そして負け戦に顕れる美しさが描かれております。
 一見青臭いヒューマニズムの発露に見えるフレイの決断も、きちんと政治的判断が働いている辺りも物語の説得力を増しております。
 決して派手な展開ではないのですが、しっかり描かれた戦況と人間描写が骨太な作品。
 負け戦の中で誕生し、とらわれの身となってしまった英雄がこれからどうなっていくのか、動き出した歴史がどうなっていくのか先々が非常に気になります。

SWORD GALE(3) (KCデラックス)

SWORD GALE(3) (KCデラックス)