原作:和智正喜 作画:橘由宇『モントリヒト 月の翼』1巻

 月の一族(モントリヒト)。
 かつて夜の世界を支配していながら、18世紀にフランケンシュタイン博士が作り出した人造人間によって駆逐され、やがて絶滅してしまった吸血鬼の一族。
 時は経ち、日本で生き残った一族が発見される。
 その生き残りのグループは、「F機関」から差し向けられる人造人間の刺客達から生き延びることが出来るのか――。


 「コミックラッシュ」連載中のバトルアクション。
 吸血鬼VS人造人間、という今風のバトル物ではありますが、強大な力を持つ吸血鬼対戦闘機械の人造人間――ではなく、ひっそりと生きてきた吸血鬼の末裔が、強力な戦闘力を持つ人造人間からのサバイバルを図る、という図式で吸血鬼は追われる側、というのは新鮮な感じであります。


 「人間でいるため」に人殺しをせず、日々の糧(=血)を得るにも汲々としている月の一族。そんな弱い彼らの味方となるのはある事件をきっかけ記憶を取り戻した人造人間 F11(エフ エルフ)。人造人間でありながら、月の一族との関係が深いF11が抱える過去とは。
 その謎と、かつての敵であったF11の受け入れを巡る月の一族達の葛藤、そして人造人間達とのバトルを軸に1巻の物語は展開。



 細めの線で描かれたアニメチックな絵柄は今風で美麗であります。襲い来る人造人間達はちと人倫から外れているものの美女揃い。無邪気に残酷な殺しを行うロリ娘のジャック・ザ・リッパー、サディスティックな毒殺魔のブランヴィリエ侯爵夫人、一癖も二癖もある人造人間達に立ち向かうのは凛とした正当派金髪美少女剣士のF11。そんなお姉ちゃん達がバトルの中で傷つき、肌を晒し、苦悶の表情を浮かべる様子はなかなかに、いやかなりエロティックであります。


 いきなり登場人物が多いわりに掘り下げがあまりなかったり、「月の一族」の設定で伏せられている部分が多かったりと、物語の入り口でちょっと戸惑う部分が多いような気もしますが、そこら編は後に色々はっきりしてくるのでしょう。
 1巻だけではまだまだどんな展開になるか読めない部分も多いので、次巻に期待を。


モントリヒト 1―月の翼 (CR COMICS)

モントリヒト 1―月の翼 (CR COMICS)