黒葉『触手姫』1巻

 このタイトルにして、あの「ヴァルキリーコミックス」レーベルの作品。
 いくら帯の注意書きに

「この作品はいたって健全な内容です。タイトルから想像されるようなアレやコレは(少ししか)含まれておりません。一般の方でも安心してお買い求めいただけます」

 とあろうとも「ははは、ご冗談を」と稲葉義男演じるところの五郎兵衛のように言いたくなるのが人情というもの。
 いや、しかし、でも。
 読んでみたら、看板に偽りなしの本当に健全な物語で吃驚。


 ヒロインのアルマンドは剣技に秀でたわがままなお姫様。
 王家の人間は幻獣を使役できるのですが、彼女が召喚する幻獣はなんと「触手」。
 そんなアルマンドは、幻獣を悪用する怪しげな一団と町で遭遇した事件をきっかけに「幻獣殲滅触手de討伐☆ラブリーアルマンド!部隊」略して「触手部」の隊長に就任。へっぽこな部下達と捜査に当たることに。そこへ金銭にうるさい賞金稼ぎの少女 シャルル(関西弁)も加わって触手部の活躍が始まるのでありました。


 バトルシーンで多少胸元がはだけたり、下着が見えたりといったサービス要素はあるものの、それは微々たるもので(そもそもアルマンドの下着はかぼちゃパンツだったり。それをお色気と言えようか、いや言えまい。反語。)、ヴァルキリーコミックだからといって触手でヌチヌチといった要素は本当に控えめ。


 寧ろ、わがままでおてんばなアルマンド姫と、彼女をからかいながらあしらうシャルルという凸凹コンビが繰り広げる漫才のような明るく楽しい掛け合いとドタバタが本作の魅力でありましょう。
 エッチい、ではなくポップで可愛らしいといった印象が強い作品となっております。
 姫様のくせに行動派でちょっと抜けてるアルマンドと、王族相手にも物怖じしないしたたかさと、弱い者への優しさを持ったシャルル、二人の主役をはじめとして、にっこり笑って人を斬るタイプのアルマンドの姉 女王パヴァーヌや、触手部の部下ヘッポコ3人など、キャラクターも立っていて物語を牽引する力も充分。アクションシーンの描写も魅せてくれます。


「どうせお姉ちゃんが戦ってピンチになってお色気シーンがあるだけだろー」的なこのレーベルの作品への認識を改めさせてくれる作品であります。コミカルなファンタジー作品として普通に面白いです。


触手姫 1 (ヴァルキリーコミックス)

触手姫 1 (ヴァルキリーコミックス)