山崎毅宜『白球少女』1巻

白球少女 1 (Flex Comix)

　転入生・白石円（つぶら）の正体は天才野球少女。
　しかし、彼女は「絶対に野球なんかやらない！」と宣う野球嫌い。
　そんな彼女に目を付けた野球部は何とか彼女を野球部に引き入れようと勧誘活動を開始。
　野球なんか絶対に嫌！　という円と、何としてでも彼女に野球をやらせたい野球部の激しくもおバカな攻防がここに幕を開けるのでありました――

　というわけで、Yahooコミックス内、「Flexcomixブラッド」で連載中の異色の野球漫画(?)が遂に単行本化。

　野球については初代「ファミスタ」を遊んで学んだ程度の知識しか持ち合わせていない、というくらい野球に無知な私ですが、この作品はそんなことをものともせず、とにかく楽しいのであります。
　「コレは野球漫画の皮を被った何か!!」という帯の惹句が的確に本作を表しておりましょう。

　物語は円と野球部の「野球なんかやらない！」「お前野球やれよ！」という攻防を軸に展開。そこを円が何でそんなに才能があるのに野球嫌いなのかという興味で引っ張っております。

　それを彩るのはおバカで茶目っ気たっぷりな登場人物達。
　隠しておくつもりだったのに、全校生徒の前でうっかり発揮されてしまった円の野球の才能を目にして、彼女を野球部に引き入れようと画策する部員達。女の子だもの、そもそもメンバーに入れられないんじゃない？　という当然の疑問について「サラシを巻いて胸さえ隠せば問題ないだろ？」と一蹴してしまう馬鹿さがステキです。覆面を被って円の前に登場し、無差別ノックを仕掛けるなど阿呆すぎます。
　そんな無茶苦茶且つバカな野球部の勧誘を力でねじ伏せた円ですが、奸計（？）にはまって野球部に入部することに。しかし、やっぱり野球をやりたくない彼女なので、部員の攻勢は続くのでありました。

　テーマは間違いなく「野球」と「野球をすること」のハズなのに、物語はそこからどんどんずれて明後日の方向へ。え、猿？　え、誰このドラゴンの着ぐるみのオッサン！？　野球という中心をもちながら、全力で辺境に疾走していく驚異の野球漫画。

　そんなコメディが楽しいのは勿論のこと、躍動感溢れる描写にも目を見張るものがあります。
　窓から飛び込んだボールをキャッチする円、砲丸をぶん投げてロッカーを破壊する円、この迫力溢れる描写はちょっと凄いです。全体的にアクションがメリハリ効いてて躍動感があってこれは必見。
　また、高跳びの際にちらりと見える円のヘソとか、躍動するスカートからのぞく健康的なふとももとか、ちょっとしたお色気も実にいいなあ。

　おバカな展開と可愛い女の子と躍動感のある描写、とにかく読んでいて気持ちよく、そして楽しい一作。今後の展開も気になる非常にオススメの一作であります。