高橋慶太郎『Ordinary±』

オーディナリー± (サンデーGXコミックス)

オーディナリー± (サンデーGXコミックス)


 「サンデーGX」で『ヨルムンガンド』連載中の高橋慶太郎が、かつて「アフタヌーンシーズン増刊」に書いていたデビュー作がGXコミックスとして単行本化。

 巨大な学園を舞台に、女子高生の殺し屋 的場伊万里が完遂する「仕事」を描いております。
 女子高生で殺し屋、という一種キャッチーな設定ではありますが、アクションシーンでお色気が、とか、青春をエンジョイしつつ、でも裏ではハードなこともやってるんです、的なライトなものではなく、重くてハードな佇まいの作品。

 伊万里は高校生としての身分が与えられているものの、その本業はあくまで「殺し」。
 その本業を遂行するために、高校生としての楽しさや潤いといったものはなげうって、殺人機械の冷たく高性能な本体を、高校生という薄皮で包んでいるような状態。
 ひとたび指令が下れば、標的に情け容赦なく、そして正確に鉛の弾をブチ込む彼女。
 殺しのためだけに生きている無機質な伊万里の「普通」であることに対する諦めと憧れが同居する乾いた哀しみが物語を引っ張ります。

 掲載がもっと続いていれば、外郭となる物語の設定も語られたのだとは思いますが、それが無くても伊万里の抱える哀しさと、ケレン味とスピード感溢れるガンアクションは魅せてくれます。

 硝煙の匂いが染みついた死と隣り合わせの世界に生きる少女、ということで本作と現在連載中の「ヨルムンガンド」は共通しておりますが、殺人者という冷たい鎧が僅かに残った年相応の少女の心を固く守っている伊万里と、傍目には陽気で子供な姿を見せながら、その実裏社会の実力者として腹を据えているココは実に対照的な存在。
 デビュー作である本作から「ヨルムンガンド」の間に見られる共通点と、成長・変化を見ることができるのではないでしょうか。