なかいま強『ライスショルダー』1・2巻

ライスショルダー(1) (モーニング KC)

ライスショルダー(1) (モーニング KC)

 ボクシング漫画は数あれど、女子ボクシングを扱った作品はなかなかお目にかかりません。
 しかもこの作品、主人公はなんと身長193センチ、体重92キロのヘビー級少女なのでありました。

 村の相撲大会、張り手一発で男を吹っ飛ばしてしまうような凄まじいパワーを持った少女 秋野おこめ。
 彼女に目を付けた女子ボクシングのトレーナー夏木茜によってボクシングの道を歩んでいくことになるのですが……。

 そんなパワーを持っているにも関わらず、あまり戦いを好まないおこめ。その才能は客を呼べると踏んで、脅したり賺したり、何とかボクシングの道に引きずり込もうとするジムの会長。そんな会長のやり口を苦く想いながらも、存続の危機にある女子ボクシング部門と、おこめの才能を見込んでやっぱりボクシングをやらせたい茜。
 いろいろな思惑に乗せられながら、戸惑いながらボクシングに関わっているうちに、おこめは徐々に自分が秘めた才能に興味を持ち始めます。

 技術的には何も持っていないおこめですが、兎に角そのパワーが凄まじい。サンドバッグを吹き飛ばし、ガードの上から男性ボクサーの腕を折ってしまったりと、まさに一撃必殺のハンマーパンチ。でも本人は純朴な田舎娘でそんなパンチを当ててしまうたびに「ごめんけさい」とおろおろしてしまう、というギャップが愉快。
 方言とやさしい性格のせいでどこか緊張感を欠いたまま、リング上でコントのようなやりとりを繰り広げますが、対戦相手はその力に内心戦慄しているという。

 いろいろな意味で掟破りで規格外のおこめ。そのキャラクターと、まだまだ洗練されていない彼女のスタイル故に、真剣でありながらユーモラスに試合が運んでいく様が楽しいのが魅力。これでおこめがボクサーとして目覚めた時、経験を積んで洗練されてきた時にどう変化していくのかも気になるところ。

 かなり変わった娘ではありますが、眠れる才能として描かれるおこめに対し、同時入門の才能の乏しく、パンチ力が全くない、でもボクシングへの情熱は人一倍の石松美春という正反対の存在も物語のアクセントとして非常に効いています。

 夢追い人の流しのお父さん、くせ者のジム会長など脇役も個性的で、物語の転がり方に弾みを付けてくれそうです。無茶苦茶に力強いくせにどこかテンポのずれた田舎娘・おこめが可愛くもあり、楽しくもあり。兎に角いろいろとパワフルな物語、これからの展開に期待であります。