田中ユタカ『愛しのかな』2巻

愛しのかな(2) (バンブー・コミックス DOKI SELECT)

愛しのかな(2) (バンブー・コミックス DOKI SELECT)

 幽霊が出るという噂のために借り手のないアパートに住む青年・大吉と、実際にそこに出る幽霊・かな。一緒に暮らすことになった二人の愛情いっぱいの生活を描きます。

 1巻の最後の事件でアパートから出て自由に出歩くことができるようになったかな。遊園地でデートをしたり、一緒にコンビニに行ったり、銭湯に行ったりと、ささやかながらも幸せに満ちた日々を送る二人。
 大吉青年と過ごすその日々の中で、何でもないようなことではしゃいだり、笑ったりするかなが本当に楽しげで。
 本人は理由を覚えていないけれども、その死因は自殺だったらしいかなが、大吉青年との出逢いによってこんな風に笑っていられるというのは、実に素敵なことだなあ、と思うのです。
 一度は死んでいるかなと、それまでの生活で辛いことがあり、今も手放しで問題なしとは言えない大吉青年からは、ささやかではあるものの、せっかく手にいれた心温まる時間を心の底から大切にしよう、というのが伝わってきて暖かいけれども、どこか切ない空気があります。

 田中ユタカ先生の作品が登場人物に向ける眼差しというのは、いつも真面目で優しくて、真摯にキャラ達と向き合っている感じが伝わってきてとても好きです。

 また、オカルト好きのコンビニ店長や、彼に冷静に対応する店員の矢口さん達とのやりとりも愉快に微笑ましく、最後に登場した新キャラ・お向かいに住むことになった詩子さんが二人の生活にどういう影響を与えていくのかもまた楽しみ。そして、幽霊になったかなが忘れている自殺の理由は何だったのか。
 二人のこれからの生活にちょっと変化がありそうで、これからどうなっていくか楽しみです。