アサミ・マート『木造迷宮』

木造迷宮 (リュウコミックス)

木造迷宮 (リュウコミックス)

 売れない小説家の「ダンナさん」と、彼の家で働く女中のヤイさん、ちょっと古びた木造一軒家を舞台に二人の日々の暮らしを描きます。

 いやあ、ヤイさんが実に可愛らしいです。割烹着が似合って、家事全般が得意で、気づかいができて、優しくて、たまに子供の様にはしゃいでみたり、お酒が入るとちょっと艶っぽかったり。ああ、可愛らしい人であることだなあ。
 そんなヤイさんが生活能力が乏しいダンナさんを陰に日向に支える様は奥さんのようでもあり、お母さんのようでもあり。冴えないダンナさんと、ちょっとおっとりしたところのあるヤイさんの組み合わせは実に画になります。

 ダンナさんも、ヤイさんも互いに気になってはいるものの、二人とも大変な照れ屋で不器用なものだから、じれったいまでに仲が進まず、なんとも初々しい関係が続きます。この恋愛の手前で止まっているような可愛らしい関係が丁寧に描かれていてこれまたいいなあ、と。

 どこかノスタルジーを感じさせるちょっと古びた家屋の描写も実に雰囲気があって作品全体がほっとするゆったりとした空気に包まれております。大きな事件が起ったりはしませんが、ダンナさんとヤイさんの不器用だけれども互いを思いやる優しさが溢れ、ちょっと笑えるエピソードがたくさん。地味かもしれませんが、とてもいいですよこれは。

 そして最後にもう一度。ヤイさんが実に可愛らしい!