野上武志『月の海のるあ』1巻

月の海のるあ 1 (ヤングキングコミックス)

月の海のるあ 1 (ヤングキングコミックス)

 零式水上観測機を駆り「月影の零」と呼ばれる賞金首と、彼の娘・るあ。
 その「るあ」を巡って交錯する野心と謎。
 現実とは少々異なる歴史を刻んだ1960年代の南洋パラオを舞台に繰り広げられる鉄と美少女満載の物語がここに開幕であります。

 謎に満ちた美少女、飛行機乗りの少年、「秘宝」を求める特務に就くドイツ軍、その任に当たる日本人武装SS、南国の太陽と海を彩る戦艦と飛行機―――などなど、男子の浪漫を掻き立てる設定が山盛り。ドイツ軍・日本軍と美少女が嫌いな男子がどこにおりましょうや。

 ヒロインのるあは育ての親である零にべた惚れの無邪気な少女で、無邪気であるが故にポロリや不用意な密着にも無頓着でドキドキもの。おまけに履いていなかったり。脇を固めるお姉さん方もサービス多めとお色気に不足なし。

 戦車でも、戦艦でも、その兵器への蘊蓄と愛情を傾けてきた著者のこれまでの作品。
 この作品でも多くの実在兵器が登場し、ディティールに凝っておりますが、本作はその兵器語りを中心に展開するものでは無く、世界観と舞台を構築する大きな要素として存在するものの、物語の中心はあくまで「月の姫」るあを巡る謎と野望の交錯となりそうな感じです。

 急速に成長するるあは何者なのか、るあを追って表れた二人の真意は、日本人SSである黒葉大佐の目的は何なのか、そして「力」とはいったい何なのかなど1巻では兎に角多くの謎が提示され、物語の輪郭はまだまだまだ不明。るあを拾ってからどんなことがあったのか、過去と現在がどう繋がるか、時系列を前後して少しづつ語られる物語がどのような形を見せるのかを楽しみに待て次巻!