カトウコトノ『将国のアルタイル』1巻

将国のアルタイル(1) (シリウスKC)

将国のアルタイル(1) (シリウスKC)

 緊張の続くトルキエ将国とバルトライン帝国の間に起った帝国大臣暗殺事件。それに端を発する動乱の中、将国の少年将軍 マフムートの生き様を描く歴史ファンタジー

 架空世界を舞台にした作品ではありますが、魔法や怪物のような非現実の設定は無く、14〜15世紀頃、オスマン帝国ビザンツ帝国が争っていた時代の文化・制度・歴史的情勢をモチーフに説得力のある世界観を構築しております。

 不穏な情勢の中、平和を願って奔走するマフムート。「戦」という非人間的な状況を前にしてまだ若く理想に燃える彼の言動は青臭くもありますが、それだけに人間味があり清々しく、時に切なく読者の胸にストレートに届いてきます。
 そんなマフムートの想いとは裏腹に止めようもなく戦へと傾いていく時代の流れ。二つの国家の間で交わされる様々な策略と駆け引き、数多の思惑が交錯し時代が大きなうねりを見せる中、歴史がどう動いていくのか、そしてこの少年将軍が何を思い、どのような選択をしていくのか。

 今のところ物語は歴史を俯瞰するというよりは、マフムートという個人に焦点を当てた若き英雄の物語として進行しております。冒頭で今後の大戦の存在が示されていますが、この1巻の時点ではまだ開戦前夜といった状況。歴史と一人の英雄の卵がこれから辿る道筋がどうなるのか、実に興味深く、今後の展開が非常に楽しみな物語。イヌワシ遣いの将軍として要所要所でマフムートが魅せるケレン味のあるシーンも見所。ちょっと今後が見逃せない感じで個人的に要注目の一作です。