二宮ひかる『シュガーはお年頃』1巻

シュガーはお年頃 1 (ヤングキングコミックス)

シュガーはお年頃 1 (ヤングキングコミックス)

 将来「娼婦になりたい」と考えているちょっと変わった女子高生 畑中恵子。彼女はクラスでの「女の子グループ」の人間関係に違和感を覚えながらもその輪の中にいる。しかし、ある日図書室で一人昼食を摂る浅見椿と出会い、彼女と一緒に過ごすようになるが、椿の周囲には悪い噂があり――

 二宮ひかる先生の新作は女の子のコミュニティに注目した作品。
 休み時間にトイレに行くのも一緒、グループでご飯を食べることが掟、興味のない話題でも話についていかなくてはならない――等々、全てに「同じであること」「一緒に行動すること」を要求され、それに従えない者は排斥するという異様だけれども、どこにでもあるグループ。
 そんな女の子グループの在り方を「変だなあ」と思いつつも孤独でいることが怖いのでなあなあでやっているケーコは、誹謗中傷にも動じず一人でいる椿に興味を持ち、彼女に近づいていくのであります。しかし、その椿という異分子に近づいたケーコにも有形無形の悪意が取り囲むのでありました。

 女の子達の密やかな悪意はナチュラルなだけに結構えげつないものがありますが、主人公のケーコがちょっとおバカな天性の明るさを持っているのと、自分の事を第三者視点でどこか突き放して客観視しているので、内容は性が絡んだ結構ヘビーなのにも関わらず、今のところ大きく救われた明るい感じのお話となっております。

 恋も性も知らず、そちらに興味津々なケーコが友人達や椿を通じてそれ系の話題に触れていく様子がなんだか可愛らしい。「娼婦になりたい」という将来の希望も「なんとなく」だったりしますし。本人もはっきりとは自覚していない形で誰かに必要とされたい、自分を必要とする人の力になりたい、という想いの発露ではあるようですが、今はまだそれがもやもやとケーコの中で形になっていない状態のようです。

 その他の友達と何とか上手くやりながらもちょっと居心地の悪さを感じているケーコと、結構ハードな過去を抱えて周囲の悪意を一人受け流す椿。環境もものの考え方も違いますが「強さ」を持ったこの二人の友情の行く末や如何に。
 二宮先生の作品としては男性の影が今のところ少ないという意味では本作は異色作かも。椿に好意を持つ男子生徒が登場しておりますが、彼がどういうポジションになっていくのでありましょうか。