青野春秋『俺はまだ本気出してないだけ』2巻

俺はまだ本気出してないだけ 2 (IKKI COMICS)

俺はまだ本気出してないだけ 2 (IKKI COMICS)

 人生とは本人にやる気さえあればいついかなる時にも再スタートを切ることができるのです! ……スタートを切るだけなら。そのあと、きちんと完走できるのかどうかはまた別の問題、ということで……。

 そんなわけで、1巻の時は感想を書きそびれてしまったので2巻分まとめて。

 40歳になって会社を辞めて漫画家を目指すことにしたシズオ。しかし若者に混じってファーストフード店でバイトをしたり、社会人の友人に説教してみたり、父親に逆ギレしてみたり、漫画も描かずにぐだぐだやっていたり、たまに描いても編集さんから没をもらったりと雑誌の新人賞はとったものの「漫画家」への道は遙かに遠く――。

 と、40代で人生の再スタートを切ったシズオさん。バイト先のあだ名は「店長」(平バイトですが)。子持ち。貯金無し。親にもすっかり呆れ果てられて――端から見たら色々とアウトなのですが、本人は相当にふてぶてしく生きております。俺はいつかやる男だよ、とあまり根拠の無い自身を土台に日々周囲を振り回しながら生きております。
 ただ、時折将来の不安や現実のヤバさを突き付けられて落ち込むこともありますが、そんな時はタイトル通り「俺はまだ本気を出してないだけ」と自分の可能性を頼みにまた力強く生きていくのでありました。
 40歳、「不惑」どころか迷走しまくりのシズオさん。過剰な自意識とままならない現実を抱えて一体どこへ行こうというのでしょうか。

 自分のような人生の寄り道をしまくりな人間がコレを読みますと、グサグサと心に突き刺さるモノがあるのですが、それでも笑えてしまうコミカルさがあります。シズオさんの前向き(?)加減と、不都合への目の瞑りっぷりは素晴らしい。
 いくらでも重く描ける題材をこれだけ明るく笑える作品に仕上げているのはステキな事だなあ、と。

 2巻では家出してしまったりとほとほと困ったオッサンっぷりを発揮するシズオさんがトホホで愉快。しかし、一方で過去の両親とのエピソードなどグッと心に迫るお話もあり心憎い限りであります。