佐藤信『ソードゲイル』4巻

SWORD GALE(4) (KCデラックス)

SWORD GALE(4) (KCデラックス)

 ベルジエ帝国軍との戦に敗れ、ボーウェン王を捕えられてしまったフェレー王国。帝国軍の王都への入城を許し、帝国の属領化は免れないという状況の中、囚われのボーウェン王が下した決断とは――。

刻々と変わる戦況を戦術レベルで活写した前巻と打って変わり、この4巻では占領下にある敗戦国の都を舞台に、王国存続の希望を託され、再起に賭けて行動するフレイやアストレイの姿を描きます。
 帝国の占領下にあり、フレイらは捕らえられて、と如何ともし難い状況の中、ボーウェン王が下した決断が帝国軍に与えた動揺が広がる中、脱出に動くフレイ達。
 国王の決意、王国存続の意志を継いで行動に移るフレイ達もいいですが、遠征軍として本国の評価を気にせざるを得ないシモンの軍隊、そういうシモンの立場を理解し賢しく立ち回るアシャール、状況の変化により誰の言うことを聞くのが得かと自分たちの主を見定める帝国軍兵士、そしてその状況を冷徹に観察し一手を打てるシモンなど、様々な思惑が交錯し、状況によって移ろう軍隊の状況の描写、それぞれの緊張した心情描写は素晴らしいものがあります。

 一つの国が滅亡し、しかし再興へ繋がれた一縷の望み。新たな局面を迎える骨太な物語の今後に大期待であります。